「指針」に対して沖縄は怒っています

沖縄戦「集団自決」記述「指針」に対する声明

2007年12月10日

6.9沖縄戦の歴史歪曲を許さない!沖縄県民大会実行委員会
沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会

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文部科学省教科用図書検定調査審議会は、高校歴史教科書沖縄戦「集団自決」の記述から日本軍の強制性を削除させた件に関し、教科書会社による訂正申請に対し、再度の書き直し「指針」を伝えていたことが明らかとなり、「指針」の全容が12月9日付の新聞報道で紹介された。


報道によれば、「指針」の内容は、「それぞれの『集団自決』について、直接的な軍の命令に基づいて行われたということは、現時点では確認できていない」としたうえで、「『集団自決』が起こった背景・要因について、過度に単純化した表現で記述することは、『集団自決』についての生徒の理解が十分にならない恐れがある」と指摘している。その上で、「沖縄戦の戦時体制、さらに戦争末期の限定的な状況下で、複合的な背景、要因によって住民が『集団自決』に追い込まれていったととらえる視点に基づく教科書記述が望ましいと考える」としている。


この「指針」に示された内容は、これまで9.29県民大会などを通じて明らかにされた沖縄戦の事実、県民の思いに応えるものでなく、到底容認できるものではない。


第一の問題点は、「指針」が「集団自決(強制集団死)」を、日本軍(皇軍)の強制・命令・誘導・強要等によって引き起こされたものである点を曖昧にしていることである。「集団自決」の背景が「当時の『教育訓練』や『感情の植え付け』など複雑なものがある」としているが、沖縄戦における「集団自決」は、日本軍(沖縄守備軍第32軍)による「軍官民共生共死」、「生きて虜囚の辱めを受けず」という方針に基づいた教育訓練等が軍・官、つまり軍と行政が一体になって住民に徹底され、「感情の植え付け」が住民になされた結果起こったものであり、日本軍の強制・命令・誘導・強要等により発生したことは疑いの余地がない。「手榴弾配布」に関しても、事前に住民に対して「一発は敵に投げ、もう一発で自決せよ」として渡されていることからも、日本軍の命令にほかならない。「指針」は、「住民側から見れば、当時のさまざまな背景や要因によって、『集団自決』せざるを得ない状況に追い込まれた」としているが、住民側から見た「集団自決」も同様に、日本軍によって強制・命令・誘導されたものであったことが戦争体験者の多くの証言によって語られており明らかとなっている。


このような点を踏まえると、「それぞれの『集団自決』について、直接的な軍の命令に基づいて行われた」を踏まえたにせよ、「日本軍によって強いられた死である」ことを教科書記述の中心とすべきである。この点を避け、「複合的要因」と記述させることは、審議会の指摘している「いかなる事実がどのように起こったかが誠実に追求され、その成果が生徒にきちんと伝わる記述」とはならないものである。


第二に、この指針の内容は、3月末に明らかになった検定修正意見と全く変わらないものであり、この半年間に示された県民の怒り、証言を再検証したものとは言えないという点である。私たち沖縄県民の怒りは、文部科学省による「軍の命令については断定できない」とする「検定意見」に対するものであり、「沖縄戦の真実を教科書記述に」というものである。「沖縄戦の事実を歪曲してはいけない」という沖縄県民の声に真摯に対応するというのであれば、文部科学省検定審議会は、速やかに検定意見の撤回をすべきである。


検定意見の撤回をせず、審議会自らの責任、つまり沖縄戦の事実の歪曲、並びに実質審議をせずに検定意見をつけたという2重の誤りに対する責任を不問にし、従来の検定意見を踏襲した「指針」は、絶対に受け入れることはできない。


あらためて、9月29日の県民大会決議通り、速やかに検定意見の撤回が行われることを、ここに強く求めるものである。