白リン弾:イスラエル軍は故意に多用

北朝鮮ミサイル問題や、政治と金の問題、WBCフィーバーで忙しいのか、日本のメディアは動きが鈍いようです。毎日新聞が1日遅れで報じました。

白リン弾イスラエル軍は故意に多用…人権団体が報告書


 【エルサレム前田英司】国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は25日、イスラエル軍による先のパレスチナ自治区ガザ地区攻撃について、同軍が「非人道性」の指摘される白リン弾を繰り返し人口密集地で使用し、パレスチナ市民を殺傷したとの調査報告書を発表した。HRWは「戦争犯罪の証拠」だと非難している。


 これに対し、イスラエル軍はガザ攻撃で使ったのは「発煙弾」であり、「使用は国際法に合致している。市民を脅威にさらしたとの指摘は根拠がない」と反論した。軍は近く、独自の調査結果をまとめて公表するという。


イスラエル軍の『独自の調査結果』も是非読みたいと思います。
白リン弾といい、婦女子の無意味な殺害といい、Tシャツ問題といい、イスラエル軍が調査報告しなくてはならない課題は山積みのようです。

 白リン弾は空気と反応して発煙・発火する兵器。ざんごう内の兵士をいぶりだしたり、対戦車砲向けの煙幕などとして有効とされ、主に「発煙弾」として使われる。国際条約で使用を禁じられた兵器でなく、化学兵器とも見なされていないが、皮膚に触れると激しく燃焼し続けて人体に深刻な被害をもたらすことから、その「非人道性」が問題視されてもいる。


ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)の中立的で穏やかな筆致を反映した記事の表現です。

 HRWは現地調査の結果、ガザの市街地や民家の屋上、国連機関の学校などで白リン弾の残骸(ざんがい)を確認。 イスラエル軍白リン弾の危険性を認識しながら、故意または無責任に多用した」などと結論づけた。また、確認した残骸はすべて米国製だったとして、米国にイスラエル軍の使用実態を調査するよう求めた。


以下はヒューマンライツウォッチ報告書の結論部分の一部(p65)です。
国際法違反の罪状5点があげられています。

White Phosphorus Use in Populated Areas and Individual Criminal
Responsibility


(中略)


The IDF’s deliberate or reckless use of white phosphorus munitions is evidenced in five ways.
イスラエル国防軍による白リン弾の故意または無責任な使用は5つの点で証明されます


First, to Human Rights Watch’s knowledge, the IDF never used its white phosphorus munitions in Gaza before, despite numerous incursions with personnel and armor.
第一、ヒューマン・ライツ・ウオッチが知る限り、IDFはこれまで兵員と武装を伴った数多くの侵攻にもかかわらず、ガザでは白リン弾薬を一度も使用していません。


Second, the repeated use of air-burst white phosphorus in populated areas until the last days of the operation reveals a pattern or policy of conduct rather than incidental or accidental usage.
第2、作戦最後の数日までに行われた人口集中地域への空中炸裂白リン弾の反復使用は、偶発的でも突発的でもなく、むしろ作戦パターンか作戦方針の様相を露わにしました。


Third, the IDF was well aware of the effects white phosphorus has and the dangers it can pose to civilians.
第3、IDFは、白リンによる影響とそれが民間人にもたらす危険を事前によく認識していました。


Fourth, if the IDF used white phosphorus as an obscurant, it failed to use available alternatives, namely smoke munitions, which would have held similar tactical advantages without endangering the civilian population.
第4、IDFが目くらましとして白リンを選んで使用したなら、それは、使い得る代替弾薬、つまり発煙弾といわれる弾薬の選択の誤りです。代替弾薬とは、一般市民を危険にさらさずに同様の戦術の利点を保持できるもののことです。


Fifth, in at least one of the cases documented in this report – the January 15 strike on the UNRWA compound in Gaza City – the IDF kept firing white phosphorus despite repeated warnings from UN personnel about
the danger to civilians.
第5、少なくとも、このレポート#8211に記録された1つのケースや、ガザ市のUNRWA複合施設への1月15日の攻撃#8211では、IDFは、民間人への危険についての国連職員からの再三の警告にもかかわらず、白リン弾砲撃を続けました。


Under international humanitarian law, these circumstances demand the independent investigation of the use of white phosphorus and, if warranted, the prosecution of all those responsible for war crimes.
国際人道法の下では、これらの事情は、白リン弾使用の独立調査を要求するとともに、もし立証された時には、戦争犯罪の全ての責任に関して起訴することを要求しています。


なお報告書はほかの章で、国際法違反の法的検討を詳細にしているようですから、じっくりと読んでいく必要があると思います。